小説【タンチョウ 白い翼が大空にはばたいていたあの頃、私はまだ彼等が絶滅危惧種という事を知らなかった。もう1度白銀の大地に飛翔する姿を見たいと願ったのは、彼らの命と生きる強さを知ったからだ。】

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タンチョウがゆっくりと起き上がりこちらを見ている

丹頂鶴
ツルの1種である。
古来より愛されているタンチョウ、日本の広域で生息し一般的に観察出来ていたようで
江戸時代では「鶴は千年」なんて言葉が生まれたほど人間に近い存在として親しまれていた、だが
日本の高度成長と近代化の加速により繁殖地域の破壊、生息環境の悪化が発生

ついには本州から姿を消す。
1924年、釧路にて個体の確認・再発見をされるまで絶滅したと考えられていたらしい。

現在国の天然記念物である。

絶滅危惧種Ⅱ類に指定されている


今日は趣向をかえてタンチョウを使った小説を書いてみたいと思います!
淡々としているから、つまらなかったらごめんなさい!




あの頃私は北の国の南側、いわゆる道南にいた。


恥ずかしいことを言うが、あの頃の私は
何故生きるのか、何のための命なのか、誰の為の人生か。
本気で答えを探していた

…うん、りっぱな中二病だよね(笑)


父親が病院に入院した冬休みのある日、

私は
誰にも何も告げず家を出た

電波少年※後世に語り継がれる、伝説の過激なTV番組※
で覚えたヒッチハイクを使って、行く当てもなく広大な北の国を彷徨った。

車で行ける所まで行く
真冬の大地だ…天候の不安もある、ドライバーに心配されるが
「どうしても行かないとならない」と押し切った
後は歩いて行ける所まで歩いた
歩いて歩いて、歩きまくった


そうして広い雪原にたどり着いた。


何もない
あるのは白い雪だけ…

声を発してみる

自分の発した声は、遅く鈍くこだまして自分にかえってくる
白い世界が造る音のホライゾン、新雪が音を吸収し聞こえるのは自分の血流
心臓の音だけだった

真冬の、肌を刺す様な凍てつく大地に私は倒れこんだ
綿雪か体をつつむ。


粉雪が舞う空をみていた。


上空から普段あまり聴かない鳴き声が響いてきた
白雪に埋もれながらその方向を見てみる

丹頂鶴だ

珍しいな最近見なかったのに

それもそのはず、1980年代後半の日本においてタンチョウは絶滅したに等しい。

だが私はちょいちょい冬に目撃していたし、実際に何度も写真※写るんです※に撮ったりもして、いたりした
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そのタンチョウ…彼は私の方に向かって降りてきた、珍しいものだタンチョウが人間に近づくなんて

私にさらに近づいてくる彼
そんな彼に私は危害を加えないという意思表示をした。


突如大きな鳴き声を出す彼、正直びっくりだ
それは、どうやら合図の様でどこからか彼の仲間が集まりだした
横になっていたので見えなかったが群れが近くにいたようで、
そう彼は、危険がないか私の様子を見にきていたのだ。
どうやらこの雪原は彼らの餌場だったようだ。

その群れは、ツガイ、や
親子で形成されているようだった。


…親子


私が親、と思っていた人は
戸籍上は赤の他人だった
興味本位に親の書斎に忍び込み、エッチな本を物色していたら偶然見つけてしまったのだ

戸籍謄本を
その意味に気が付いた時
すべてがウソの様な気がしてきた
生きてきた分積み重ねた思い出も、かけられた愛情も
私じゃない誰か、にかけられるべきじゃなかったのか……!

その答えを聞こうとした矢先、親が病に倒れる

全部偽りなのだ、だから私は家にいてはいけないんだ
そんなごちゃごちゃした感情で家を飛び出していた。




タンチョウの親子の愛は深い
群れはとても仲がよさそうに連れ添っている



…親がくれたモノは、本当に偽りだったのだろうか
体調を崩した時、必死で看病してくれた優しさも、全部ウソだったのだろうか?
ならば何故あんなに愛してくれたのか
ウソなら、最初から優しくしないでほしい。。
…何の為に生きて、誰の為の人生か…
家に帰ろう、そしてすべてを聞こう答えはそこにある

いらない子供ならまた出ていくだけなのだから。


一匹のタンチョウの合図とともに飛び立った白い翼の群れ
いずこかへ向かうその姿
白銀の大地を飛翔するタンチョウの姿を、私はこの両の眼にしっかりと焼き付けたのだった。。



その後、一週間ぶりに家にもどった私は思い切り父親に殴られたそして、母親に抱きしめられた。
どうやら父は病院をぬけだして必死にさがしてくれていたらしい
具合が悪いのに…今おもえば申し訳ないと思う

決意して、養子という事を切り出す…二人は表情をかえた。

だが私には、もう分かっていた事があった
掛けてくれた愛情、一緒にすごした年月は血より濃い絆を生む
と言う事を…


それが答えだ。




一時は自然交配は、もう無理かと思われていたタンチョウだが
熱心な保護・増殖活動の成果で現在野性下にて、350羽以上の繁殖ペアが確認されている

願えばいつの日か、再び本州にも白き美麗な大鳥が飛翔する日がくるかも知れない。